賃貸住宅研究 原状回復編26 目次 presented by  ライフサポート・ラボ

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特約は、故意・過失による毀損や通常でない使用方法による建物の劣化について原状回復義務を定めたものに過ぎないとされた事例

京都地判(平成9年6月10日) [@敷金29万7千円、返還29万7千円(全額) A敷金19万8千円、返還19万8千円(全額)]  

■ 事案の概要(原告:賃貸人X 被告:賃借人Y)

借主X1、X2は、貸主Yとの間で平成4年4月1日、本件建物のうち各部分をX1は月額9万9000 円、X2は6万6000円で賃貸借契約を締結し、その際敷金としてX1は29万7000円を、X2は19 万8000円を交付した。

 X1、X2は、いずれも平成7年9月24日、本件建物から退去したが、Yが敷金を返還しなか ったため、その支払いを求めた。

一方、Yは、本件契約に原状回復の特約(賃借人が建物を 明け渡す際、賃貸人が設備等の修理、清掃の必要があると認めて賃借人に通知した場合、賃借人が賃貸借開始時の原状回復する)に基づき、Yが実施した原状回復費用及び設備協力金 に充当したので、その差額の支払いを求めて反訴した。

■ 判決の要旨

これに対して裁判所は、

  1. 賃貸目的物は、時間の経過によって自然劣化するとともに、賃借人の通常の使用によって必然的に損耗することが予定されており、賃料には、それら減少価値を補う意味が含まれている。
  2. 本件特約の記載から直ちに賃借人が、無条件に本件建物を使用開始前の状態に回復する義務を規定したものとは解せないし、XらとYの間でそうした義務があることを合意したと認めるに足りる証拠はない。よって、本件特約は、Xらの故意・過失による毀損や通常でない使用方法による建物の劣化について原状回復義務を定めたものに過ぎない。 
  3. 本件建物部分の汚損がXらの故意・過失によるものとは認められない。  
  4. 以上から、Xらの主張を認め、Yの反訴を棄却した。

■ 個人的分析(今回、室内の状況及び経緯について不明なため、判断できない内容であるが・・・)

特約に原状回復に関する内容が入っていても、原状回復に関する判断の流れは、自然損耗分を除いたものとするというのが流れのようです。

原状回復の内容を具体的に規定しないと双方が誤解を招く恐れがあります。

また、特約の内容も「賃借人が建物を 明け渡す際、賃貸人が設備等の修理、清掃の必要があると認めて賃借人に通知した場合、賃借人が賃貸借開始時の原状回復する」という内容にも問題ありとも思います。

条文ひとつとっても難しいと思います。原状回復の認識が立場によって違うことを思い知らされると同時に、合法性、合理性が裁判になれば焦点になります。ある意味では、双方契約にもかかわらず、内容が一方的過ぎる生かもしれませんね。

 

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