賃貸住宅研究 原状回復編25 目次 presented by  ライフサポート・ラボ

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通常な使用収益を越えた方法により発生させた棄損箇所を認めることができないことされた事例

川ロ簡判(平成9年2月18日) [敷金14万2千円、返還14万2千円(全額)]

■ 事案の概要(原告:賃貸人X 被告:賃借人Y)

借主Xは、Yとの間で平成5年12月19日賃貸借契約(期間、賃料不明)を締結し、敷金14 2000円を支払った。Xは、平成8年8月16日に、本件建物を明け渡した。  Yは、以下の補修工事費用(合計12万2312円)を請求し、敷金のうち7万2312円をXに返さ なかったため、Xはその返還を求めて提訴した。

・工事内容
 イ ルームクリーニング費用
 ロ ガスコンロ内部クリーニング費用
 ノヘ 畳替え費用
 ニ クロス張替え費用
 ホ クロスクリーニング費用
 へ 消費税

■ 判決の要旨

これに対して裁判所は、

  1. Xは夫婦二人で本件建物に平成6年1月15日から平成8年8月16日まで居住したが、二人ともタバコは吸わず、共稼ぎであったこと、Xは本件建物を退去するまで、賃料、公共料金の未払いは一切なく、退去の際には、普通に掃除をして出たこと、Xが本件建物の通常な使用収益を越えた方法により発生させた棄損箇所を認めることができないこと、以上を総合すると、本件建物は共稼ぎ夫婦によって社会通念上通常の方法により使用され、自然ないしは通例的に生じる損耗以上に悪化していることを認めるに足る証拠はない。
  2. 以上から、Xの請求を全面的に認めた。

■ 個人的分析(今回、室内の状況及び経緯について不明なため、判断できない内容であるが・・・)

今回は、クリーニング費用の否認というよりも、合理性に欠ける過大な費用負担の否認と考えるべきだと推定されます。

通常使用の程度であれば、社会通念上こんな費用はかからず、過大だと判断されたものと推定されます。

ただし、これで、清掃代としての小額の費用負担は、否定されたものと思いません。できましたら、入居時に特約で、合理的な適切な値段をあらかじめ提示しておくのがベターだと考えます。また、今回、入居者が善良な市民と認定され、それが背景にあるものとも推定もあります。延滞していれば、裁判官の心象も違ったかもしれませんね。  

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