賃貸住宅研究  原状回復編18 目次 presented by  ライフサポート・ラボ

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ペット飼育に起因するクリーニング費用を賃借人負担とする特約が有効とされた事例

東京簡判 (平成14年9月27日)   〔敷金41万7000円 返還35万7360円〕

■ 事案の概要 (原告:賃借人X 被告:賃貸人Y)

賃借人Xは、平成12年4月、賃貸人Yと月額賃料13万9000円で賃貸借契約を締結し、敷金41万 7000円を差し入れた。

 本件契約書には、「本契約解約時における@室内のリフォーム、A壁・付属部品等の汚損や破損の修理、クリーニング、取替、Bペット消毒については、賃借人負担でこれらを行うものとする。 なお、この場合専門業者へ依頼するものとする。」との特約が付されていた。なお本物件はペット可であったので、Xは、居住期間のうち約3ケ月にわたり、小型犬であるチワワを ほとんど飼育用のケージ内で飼育していた。

 Xは、平成13年12月、本件契約をYと合意解除し本物件をYに明渡した。

 Yは、本件特約等に基づく原状回復費用として、クロス、クッションフロアー張替費用、 リーニング費用等の合計50万745円の支払を求めた。

 これに対しXは、通常損耗以上の損害を与えた事実はなく、Xの負担すべき費用はないとして、敷金全額の返還を求めて提訴した。

■ 判決の要旨

これに対して裁判所は、

  1. 通常の建物の賃貸借において、賃借人が負担する「原状回復」の合意とは、賃借人の故意 過失による建物の毀損や通常の使用を超える使用方法による損耗について、その回復を約定したものであって、賃借人の居住、使用によって通常生ずる損耗についてまで、それがなかった状態に回復することを求めるものではないと解するのが相当である。
  2. しかし、修繕義務に関する民法の原則は任意規定であるから、これと異なる当事者間の合意も、借地借家法の趣旨等に照らして賃借人に不利益な内容でない限り、許されるものと解される。
  3. 本件特約のうち、@室内リフオームのような大規模な修繕費用を何の規定もなく賃借人の負担とする合意は、借地借家法の趣旨等に照らしても無効といわざるを得ず、A壁・付属部品等の汚損・破損の修理、クリーニング、取替については、前記1と同趣旨の原状回復の定めに過ぎないと解される。しかし、Bペットを飼育した場合には、臭いの付着や毛の残存、衛生の問題等があるので、その消毒の費用について賃借人負担とすることは合理的であり、有効な特約と解される。
  4. 以上を前提とすると、@クロスについては、Xの故意・過失によって破損等の損害を生じさせた事実は認められず、ペット飼育による消毒のためであれば、張り替えるまでの必要性は認められない。Aクッションフロアには、Xがつけた煙草のこげ痕があり、その部分の補修費用3800円及び残材処理費3000円はXの負担とするのが相当である。Bクリーニングにつ いては、実質的にペット消毒を代替するものと思われ、賃借人負担とする特約は有効と認め られるので、その費用全額5万円はXの負担とするのが相当である。
    (5)以上から、Xの負担すべき費用は、合計5万9640円とした。

■ 個人的分析(今回、室内の状況及び経緯について不明なため、判断できない内容であるが・・・)

修繕義務に関する民法の原則は任意規定であるから、「原状回復」の合意と異なる当事者間の合意も、借地借家法の趣旨等に照らして賃借人に不利益な内容でない限り、許されるが何の規定もなく賃借人の負担とする合意は、借地借家法の趣旨等に照らしても無効となる。

ペットを飼育した場合には、臭いの付着や毛の残存、衛生の問題等があるので、その消毒の費用について賃借人負担とすることは合理的であり、有効な特約となる。

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