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修理・取替特約は賃貸人の義務を免除することを定めたものと解され自然損耗等について賃借人が原状に復する義務を負っていたとは認められないとされた事例
京都地判 平成7年10月5日 一審・京都簡判 平成6年11月22日 〔敷金30万円 返還29万7641円〕
■ 事案の概要(原告:賃貸人X 被告:賃借人Y)
賃貸人Xは、昭和62年5月、本件建物を訴外賃借人Aに賃料6万8000円、敷金30万円、礼金27
万円、更新料20万4000円で賃貸し、引き渡した。Aは平成4年9月死亡し、YがAの地位を承継 した。本件契約は平成4年11月合意解除され、同年12月本件建物はYからXに引き渡された。
Xは、本件特約(所定の修理、取替えに要する費用は借主負担)は、借家法6条に反せず、特約によるYの修繕義務は、契約期間中に限らず終了時にも適用され、Yは本件特約を明記した解約通知書に署名押印し、合意解除したとして、Yに対し11箇所(クロス、床及び襖の張替え、
畳裏返し・表替え、塗装工事、設備の取替え等)の修理費用(72万7592円)と敷金30万円の差 額並びに未払水道料金2359円の合計額42万9951円の支払を求めた。これに対して、Yは修繕義
務を否定し、敷金の返還を求めて反訴した。
■ 判決の要旨
これに対して第一審(京都簡判)は、
- 賃貸物の修理を借主の負担とする特約もあながち無効とするまでもないが、賃料の他多額う更新料、礼金、敷金の支払われている事実等に鑑みれば、借主の通常の使用中に生じた汚損等は右借主の支払った出資で賄うべく、本件特約にいう借主の負担する修理義務の範囲は、右の域を超えた借主の故意又は重大な過失に基づく汚損等の修理を意味すると解するのが相当である。
- 本件契約は、新改築なった新しい建物につき締結されたが、Yに本件契約開始時の状況を復元維持する義務まで課したものではない。
- Xが修理が必要とする汚損部分は、いずれも通常の使用によるもの経年によるものばかりであり、Yの負担部分はない。
- 以上から、XはYに対して敷金30万円から未払水道料金2359円を控除した29万7641円の返還義務があるとした。
Xが控訴した。
これに対して第二審(京都地判)は、
- 本件修理・取替特約の趣旨は、賃貸借契約継続中における賃貸人の修繕義務を免除することを定めたものと解される。
- 本件契約においては、賃貸目的物の通常の使用収益に伴う自然の損耗や汚損について、賃借入が積極的にその修繕等の義務を負担し、あるいは、賃貸目的物の返還にあたって、自然の損耗等についての改修の費用を負担して賃貸当初の原状に復する義務を負っていたとは、認められない。
- 以上から、原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した。
なお、上告審(大阪高判平成8年3月19日)も控訴審判決を維持した。
■ 個人的分析(今回、室内の状況及び経緯について不明なため、判断できない内容である・・・)
- 修繕特約はそのものが有効であるが、故意過失によるものに限定されるべきであり、拡大解釈は無理がある。
- また、具体的な事実関係により解釈するのが妥当で、多額の更新料、礼金のケースについては、その内容は、敷引と同様と見られる可能性がある。
- 契約開始時の状況を復元維持する義務まで課したものではない。
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