賃貸住宅研究 原状回復編6 目次 presented by  ライフサポート・ラボ

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まっさらに近い状態に回復すべき義務ありとするには客観的理由が必要であり、特に賃借人の義務負担の意思表示が必要とされた事例

伏見簡判 平成7年7月18日 消費者法ニュース25−33 〔敷金19万8千円 返還19万8千円(全額)〕
 仙台簡判 平成7年3月27日  〔敷金O円 追加支払2万7000円〕

■ 事案の概要(原告:賃借人X 被告:賃貸人Y)

賃借人Xは、平成2年4月1日、賃貸人Yとの間で建物について賃貸借契約を締結した。契約期間は2年間、賃料月額6万6千円、敷金19万8千円とされ、Xは同日Yに敷金を支払った。平成4年4月1日の契約更新時に賃料が5千円増額されたが、敷金の追加支払いはなく、Xは更新料として12万円を同年6月1日に支払った。


 Xは、平成6年1月23日に本件建物を退去してYに明け渡した。
 明渡時にY側の立会人は、個々の箇所を点検することなく、全面的に改装すると申し渡したので、Xが具体的に修理等の必要のあるものを指摘するよう要求したところ、後日Yから修理明細表が送られてきたが、内容は全面改装の明細であった。XがYの通知した修繕等を行わなかったため、YはXの負担においてこの修繕等を代行した。


 Xは、建物を明渡したことによる敷金の返還を求めて提訴した。一方、Yは賃貸借契約に基づく明渡時の原状回復の特約(契約時点における原状すなわちまっさらに近い状態に回復すべき義務)をXが履行しなかったことで、Yが負担した畳、襖、クロス及びクッションフロアーの張替え並びに清掃費用の合計48万2350円のうち、敷金によって清算できなかった差額金28万4350円の支払を求めて反訴した。

■ 判決の要旨

これに対して裁判所は、動産の賃貸借と同様、建物の賃貸借においても、賃貸物件の賃貸中の自然の劣化・損耗はその賃料によってカバーされるべきであり、賃借人が、明渡しに際して賠償義務とは別個に「まっさらに近い状態」に回復すべき義務を負うとすることは伝統的な賃貸借からは導かれず、義務ありとするためには、その必要があり、かつ、暴利的でないなど、客観的理由の存在が必要で、特に賃借人がこの義務について認識し、義務負担の意思表示をしたことが必要である。

本件契約締結の際に当該義務の説明がなされたと認められる証拠はなく、重要事項説明書等によれば、賃借人の故意過失による損傷を復元する規定であるとの説明であったとして、Yの主張を斥け、X支払済の敷金全額の返還を命じた。

■ 個人的分析(今回、室内の状況及び経緯について不明なため、判断できない内容である・・・)

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