名古屋地判 平成2年10月19日 判例時報1375−117 一審・名古屋簡判 平成元年6月22日 〔敷金O円 追加支払2万円〕
■ 事案の概要(原告:賃貸人X 被告:賃借人Y)
訴外Aは、賃貸人Bとの間で昭和55年8月31日名古屋市内の賃貸マンションについて賃貸借契約を締結し、賃料月額は12万円とされた。
同日YはAの連帯保証人となり、契約当初から利用補助者として本件建物に居住し、その後Bの承諾のもとにAから賃借権を譲り受けた 。
昭和60年7月2日、Bが死亡したため、Xが相続により賃貸人の地位を承継した。
昭和63年4月30日,に賃貸借契約が終了し、同日Yは、本件建物を明け渡した。Xは、訴外A及びYの未払賃料66万1315円を請求するとともに、昭和62年8月の温水器取替えエ事費18万5千円及び原状回復のため実施した、畳、襖、障子、クロス及びジュータンの張替費用並びにドア・枠のペンキ塗替費用50万4200円について、修繕特約(建物専用部分についてご修理、取替(畳、襖、障子、その他の小修繕等)は賃借人において行うとする修理特約及び故意過失を問わず毀損、滅失、汚損その他の損害を与えた場合は賃借人が損害賠償をしなければならないとする賠償特約)に基づきその支払を求めて提訴した。
■ 判決の要旨
これに対して裁判所は、
- 温水器の取替費用について、本件修理特約に列挙された修理等の項目が比較的短期間で消耗する箇所に関するものが多く、かつ、その他小修理という一般条項的項目によってまとめられているところ、温水器はかなり長期の使用を予定して設置される設備であると認められる。
- 修理特約について、本件修理特約は、一定範囲の小修繕についてこれを賃借人の負担において行う旨を定めるものであるところ、こうした趣旨の特約は、賃貸人の修繕義務を免除することを定めたものであって、積極的に賃借人に修繕義務を課したと解するには、更に特別の事情が存在することを要する。
- 建物の毀損、汚損等についての損害賠償義務を求めた特約は、賃貸借契約の性質上、その損害には賃借物の通常の使用によって生ずる損耗、汚損は含まれないと解すべきである。
この点についてみると、ドア等については、通常の使用によっては生じない程度に汚損していたことが認められるが、それ以外の損耗は通常の使用によって生ずる範囲のものである。また、壁クロスの汚損が結露によるものとしても、結露は一般に建物の構造により発生の基本的条件が与えられるものであるから、特別の事情が存しない限り結露による汚損を賃借人の責に帰することはできない。
- 以上から、Yが負担すべき修繕費用としては、ドア等のペンキ塗替え費用相当額(2万円) のみを認めた。
■ 個人的分析(今回、室内の状況及び経緯について不明なため、判断できない内容であるが・・・)